世界の湖の酸素濃度、温暖化で低下
日本の霞ヶ浦含む393の湖のデータ分析
地球温暖化の影響で世界の湖の酸素濃度が下がっているとする分析を、国立環境研究所や米レンセラー工科大などの国際研究チームがまとめた。湖で生物の減少や成長の遅れ、水質の悪化が進む恐れがある。英科学誌ネイチャーに3日、論文が掲載された。
チームは、欧米を中心に15年以上の観測記録がある世界393の湖のデータを分析した。その結果、1980年以降の夏の酸素濃度は、湖水の表層で平均5・5%、深層で同18・6%低下したことがわかった。日本から唯一データが採用された霞ヶ浦(茨城県)では表層の酸素濃度は変化せず、深層では低下していた。
湖は一般に、温暖化で表層の水温が上がると空気から湖水に溶ける酸素の量が減る。また冬に表層と深層の水が温度差で循環する現象が温暖化で弱まるため、深層になるほど酸素が減ると考えられる。国立環境研の松崎慎一郎室長(湖沼生態学)は「気温がさらに上がれば湖の生態系への被害は甚大になる」と話す。
国内の別の研究では、琵琶湖(滋賀県)で2018~19年度の冬、表層と深層の水の循環が止まる現象が観測され、深層の酸素濃度の低下が確認されている。
京都大の中野伸一教授(生態学)の話「日本の湖でも温暖化の影響が出ている。水深や周辺の環境によって状況が違うため、詳しい調査を進めるべきだ」